労働保険年度更新「概算・確定保険料、一般拠出金申告書」の作成方法

前回は「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表(以下「集計表」と呼びます。)」の作成方法について解説しました。
今回は前回解説した集計表をもとに作成する「概算・確定保険料、一般拠出金申告書(以下「申告書」と呼びます。)」の作成方法について解説します。
この申告書が労働保険の年度更新において最も重要な書類であり、作成後は期日(7月10日)までに各事業所を管轄する都道府県労働局、労働基準監督署などへの持参、または郵送、電子申請(e-Gov)などにより提出しなければなりません。労働保険料の申告・納付の基礎になりますので、誤りのないよう作成しましょう。

確定保険料とは

確定保険料とは年度更新を行う年度の前年度分の「確定版の」労働保険料のことです。前年度に使用した全ての労働者に支払った賃金の総額に基づき計算します。この計算は「集計表」により計算し、集計上の計算結果を「申告書」に転記します。

継続事業(建設の事業等の「有期事業」ではなく、毎年度事業が継続する一般的な事業のことです。)の場合の確定保険料の計算・申告・納付のイメージは以下の通りです。(2026年に年度更新を行う場合)

①2025年(前年)の年度更新の際に、概算保険料を計算し申告、納付します。
②2026年の年度更新の際に、2025年度の確定保険料を計算します。
①で納付した概算保険料≧②で計算した確定保険料の場合は、2026年の年度更新での確定保険料の納付はありません。
 ①で納付した概算保険料<②で計算した確定保険料の場合は、確定保険料ー納付済の概算保険料を2026年の年度更新で納付します。

概算保険料とは

概算保険料とは年度更新を行う年度の「概算の」労働保険料のことです。この概算保険料は以下の通り算出します。

概算保険料=当年度の賃金総額の見込み額×(労災保険率+雇用保険率)
※雇用保険被保険者がいない事業所については「労災保険率」のみを乗じる。

上記の「当年度の賃金総額の見込み額」については、前年度の確定賃金総額の2分の1以上2倍以下の場合は前年度の確定賃金総額と同額とし、それ以外の場合は当年度の賃金総額の見込み額を算定します。

また、年度の途中で新たに事業を開始した場合(労働保険の保険関係が成立した場合)は、保険関係成立日から50日以内に概算保険料を申告・納付しますが、その際は前年度の確定賃金総額は存在しないため、当年度の賃金総額の見込み額を計算し、申告・納付する必要があります。

延納(分割納付)とは

概算保険料は延納(3回に分割して納付)することができます。その要件は以下のいずれかです。なお、10/1~3/31の間に新たに事業を開始した場合は延納することはできません。
概算保険料が40万円以上(労災保険または雇用保険のみが成立する事業所の場合は20万円以上)の事業所
・概算保険料の額に関わらず、労働保険事務組合に労働保険に関する事務を委託している事業所

一般拠出金とは

一般拠出金は労働保険料にあわせて申告・納付を行いますが、労働保険料ではありません。「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づき、石綿(アスベスト)被害者の救済費用に充てられます。
労働保険料のように概算の仕組みはなく、労働保険料の確定保険料の申告・納付にあわせて申告・納付します。計算方法も確定保険料と同様ですが、確定賃金×「一般拠出金率(1000分の0.2)」で計算します。なお、一般拠出金率は全業種一律です。

申告書の作成方法

確定保険料・一般拠出金額の計算

集計表にもとづき前年度の確定賃金の総額を計算し、計算結果を申告書の所定の欄に転記します。賃金総額は千円未満を切り捨てた額とします。この賃金総額に労災保険率、雇用保険率、一般拠出金率を乗じて、それぞれの保険料を算出(円未満は切り捨て)します。なお、それぞれの保険料率は申告書に印字されていますので、それを利用します。

確定保険料・一般拠出金額の記入

申告書の「確定保険料算定内訳」欄は「労働保険料」「労災保険分」「雇用保険分」の3区分に分かれています。どの区分に記入するかは以下の通りです。

労働保険料:事業所の全労働者が雇用保険の被保険者の場合(労災保険料・雇用保険料の合計額を計算するための記入欄)
労災保険分:事業所の全労働者または一部の労働者が雇用保険の被保険者でない場合(労災保険料を計算するための記入欄)
雇用保険分:同上(雇用保険料を計算するための記入欄)

全労働者が雇用保険の被保険者の場合は、「労働保険料」の欄だけで一括して計算し、労災保険と雇用保険の加入者数が異なる場合は、労災保険料・雇用保険料を別に計算します。パート・アルバイトなどの短時間労働者がいる事業所の場合には、全労働者が雇用保険の被保険者にならないことがあるため、このケースにあてはまるケースがあります。

「一般拠出金額」は「労働保険料」または「労災保険分」に記載した賃金総額と同額を記入し、その計算結果を記入します。

概算保険料額の計算・記入

当年度の賃金総額の見込み額を記入し、申告書に印字された当年度の保険料率により概算保険料を計算します。
賃金総額の見込み額については前述の通りで、前年度の確定賃金の2分の1以上2倍以下であれば、前年度の確定賃金と同額を記入します。
なお、申告書の「概算・増加概算保険料算出内訳」欄の記入方法は確定保険料と同じです。

延納回数欄の記入

⑰「延納の申請」欄には、前述の延納(概算保険料の分割納付)の回数を記入します。一括納付(延納しない)は「1」、延納を行う場合は「3」(延納回数)を記入します。

納付額の計算に関する欄の記入

⑱「申告済概算保険料額」欄には、前年度の年度更新で申告・納付した概算保険料の金額が印字されていますので、この金額をもとに以下の計算を行い、それぞれの欄に記入します。

前年度の確定保険料額>申告済概算保険料額の場合:不足額として今年度の年度更新で概算保険料とともに申告・納付します。
→⑳のハ欄、㉒のハ欄に不足額を記入します。
前年度の確定保険料額<申告済概算保険料額の場合:過剰額を労働保険料・一般拠出金に充当します。
→⑳のイ欄、㉒のロまたはホ欄に充当額を記入します。

㉒「期別納付額」欄は、概算保険料の「一括納付(全期分)」または「延納(3回分)」の金額をそれぞれ記入します。
延納の場合には、概算保険料の総額を3で割り、円未満の端数は全て第1期に加算します。
今期(第1期)納付額は、概算保険料+確定保険料の不足額+一般拠出金額で計算し、結果を記入します。(充当額がある場合にはその金額を差し引きます)

以上が申告書の記入方法の基本ですが、各社の事情により様々なケースが想定されます。
厚生労働省の「労働保険年度更新 申告書の書き方」のパンフレットにも紹介されていますが、内容が複雑で難解な面もあります。
弊所でも臨時労働保険指導員の経験に基づき、丁寧にサポートさせていただいておりますので、ご不明な点があればぜひご相談いただければ幸いです。
→ご相談はこちらから

参照:厚生労働省|労働保険年度更新 申告書の書き方」https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/kakikata/keizoku.html

投稿者プロフィール

安森 将
安森 将やすもり社会保険労務士事務所 代表
開業社会保険労務士として、経営者と従業員が「共に輝く」企業づくりに向け、様々なアドバイスを行うほか、働き方改革推進支援センター(厚生労働省委託事業)専門家、臨時労働保険指導員にも従事しています。
また、開業前の25年間はJR東海で勤務。人事はもちろん、営業戦略や新幹線予約システム開発を経験した知見を活かした助言に心がけています。

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