労働保険年度更新「一括有期事業報告書・総括表・申告書」の作成方法
前回は一般の事業(継続事業)に関する労働保険の年度更新の申告書等の作成方法を解説しました。
労働保険の年度更新では、継続事業以外に「一括有期事業」に関する申告も行います。
一括有期事業に該当するのは、建設業、林業(立木の伐採事業)になります。
今回はこの一括有期事業の定義と、年度更新の流れ、および必要書類の作成方法について解説します。
一括有期事業とは
労働保険に関する事務において、事業は「継続事業」と「有期事業」に大別されます。
「継続事業」とは毎年継続して行われ、事業の期間が予定されない事業であり、多くの事業がこちらに該当します。
一方で、「有期事業」はその事業の期間が予定されている事業です。建設業や林業(立木の伐採事業)が該当します。
有期事業では、事業開始前に労働保険の「保険関係成立届」を提出し、概算保険料を納付します。そして事業終了後に確定保険料を納付します。
建設業であれば、一つの工事が開始する前に「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」提出・納付、工事が終わったら「確定保険料申告書」を提出・納付という形です。
労働保険の年度更新などの事務においては、「規模の小さい有期事業を一括して取り扱う」ことになっています。
このような事業を「一括有期事業」と呼びます。一括有期事業で有期事業の一種ですが、通常の有期事業(単独有期事業)とは異なり、労働保険料の申告・納付は、労働保険の年度更新により年度単位でまとめて行います。
この一括有期事業とは、以下のすべての要件を満たす事業です。これに該当しない場合は、通常の有期事業(単独有期事業)です。
(建設)
・一工事の請負金額 1億8千万円(消費税抜)未満
・概算保険料額 160万円未満
(立木の伐採)
・素材の見込生産量 1,000立方メートル未満
・概算保険料額 160万円未満
以下では、一括有期事業の年度更新について解説します。
一括有期事業の年度更新の流れ
申告対象(建設の事業)
- 元請工事(自社が下請で施工する工事の場合は申告対象外)
- 請負金額 1億8,000万円(税抜)未満 かつ 概算保険料額 160万円未満
- 年度更新の前年度(4月~翌3月)に「終了した」事業(工事)
※令和8(2026)年度の年度更新であれば、令和7(2025)年度中に「終了した」事業(工事)
→令和6(2024)年度以前に「開始した」事業(工事)も含まれます。
申告対象(立木の伐採事業)
- 建設の事業の2,3と同じ。
年度更新の流れ
- 一括有期事業報告書の作成
事業一件ごとに作成します。 - 一括有期事業総括表の作成(建設の事業のみ)
一括有期事業報告書の内容に基づき、賃金総額を算出し、その金額に労災保険料率を乗じて保険料額、一般拠出金額を算出します。 - 申告書の作成
一括有期事業総括表(建設の事業)、一括有期事業報告書(立木の伐採事業)をもとに、申告書を作成します。
一括有期事業報告書の作成
詳細は、厚生労働省HP「労働保険年度更新に係るお知らせ」の「令和8年度事業主の皆様へ(一括有期事業用)労働保険年度更新申告書の書き方」を参考にしてください。
ここでは、主な注意点を解説します。
「事業の種類」ごとに報告書を分ける
建設の事業の場合、後で作成する「一括有期事業総括表」において、記入欄が「事業の種類」ごとに分かれているため、元となる「一括有期事業報告書」についてもそれにあわせて「事業の種類」ごとに報告書を分けて(別葉にして)作成します。
ちなみに総括表の記入欄が「事業の種類」ごとに分かれているのは、「事業の種類」ごとに保険料の計算方法(労務費率、保険料率)が異なるためです。
「事業の開始時期」ごとに分けて記入する
建設の事業の場合、後で作成する「一括有期事業総括表」において、記入欄が「事業の開始時期」ごとに分かれているため、元となる「一括有期事業報告書」についてもそれにあわせて分けて記入します。総括表における事業の開始時期は以下の4区分です。
・平成27年3月31日以前
・平成30年3月31日以前
・令和6年3月31日以前
・令和6年4月1日以降
こちらも「事業の種類」と同様に、事業の開始時期により保険料の計算方法(労務費率、保険料率)が異なるためです。
申告時に誤りが多い箇所ですので、注意しましょう。
請負金額(平成27年4月1日以降に開始した工事)は税抜額を記入する
建設の事業の場合、平成27年4月1日以降に開始した工事の「請負金額」は、税抜額を記入します。
「事業の開始時期」と同じく、申告時に誤りが多い箇所ですので、注意しましょう。
請負金額500万円未満の工事はまとめて記入できる
建設の事業について、同一の「事業の種類」「事業開始時期」である場合に「一件の請負金額が500万円未満の工事」は、まとめて記入することができます。
まとめて記入する場合は、「〇〇工事 他●件」の例によって記入します。
一括有期事業総括表の作成(建設の事業)
建設の事業では、「一括有期事業報告書」に基づき、「一括有期事業総括表」を作成します。
前述の注意事項に基づき一括有期事業報告書を作成しているため、その内容に基づきそのまま一括有期事業総括表に転記します。
前年度に労災保険料率のメリット制が適用されている場合には、「労災保険率決定通知書」や「令和8年度事業主の皆様へ(一括有期事業用)労働保険年度更新申告書の書き方」(P44)を確認し、誤りのないよう作成します。総括表に記載の保険料率は基準の率ですので、メリット制が適用されている場合に総括表の保険料率で計算すると、本来の保険料より高く算出されるため、注意が必要です。
概算・確定保険料・一般拠出金申告書の作成
建設の事業では「一括有期事業総括表」で算出した、立木の伐採事業では、「一括有期事業報告書」で算出した、賃金総額と確定保険料額、一般拠出金額を申告書のそれぞれの記入欄に転記します。なお、この場合の「確定保険料額」は「労災保険料」に関するものですので、(イ)(ロ)欄に転記します。また、「一般拠出金額」は(へ)欄に転記します。
「概算保険料額」その他の申告方法は、継続事業の場合と同様ですが、一括有期事業の申告書では労災保険料の申告のみを行います。「雇用保険料」はいわゆる「事務所労災」の申告とあわせて、別の申告書により行います。
今回は、一括有期事業(建設、立木の伐採事業)に関する年度更新について解説しました。継続事業と異なり、書類作成や保険料計算上の注意点が多いため、難しく感じられた方も多いと思います。
弊所では臨時労働保険指導員としての対応実績に基づき、正しく申告できるようサポートさせていただくことができます。
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投稿者プロフィール

- やすもり社会保険労務士事務所 代表
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開業社会保険労務士として、経営者と従業員が「共に輝く」企業づくりに向け、様々なアドバイスを行うほか、働き方改革推進支援センター(厚生労働省委託事業)専門家、臨時労働保険指導員にも従事しています。
また、開業前の25年間はJR東海で勤務。人事はもちろん、営業戦略や新幹線予約システム開発を経験した知見を活かした助言に心がけています。
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